【理科】2020年度公立高校入試の傾向・対策
2019年度公立高校入試の全国的な出題傾向・難易度から、2020年度の入試傾向・難易度を科目別に予想!
今回は理科の対策・勉強方法について解説します♪
2020年度公立高校入試の理科対策ポイント!
このコラムでは、2019年度公立高校入試から読み取れる、2020年度の受験対策方法を科目別にご紹介します♪
今回は、「理科編」です!
2019年度の理科の入試から分かる傾向は、以下の通り!
①うろ覚えや丸暗記が通用しない「完答問題」と「長文問題」!
②「自然災害」や「環境保全」に関する問題が増加!
③理科の入試なのに「数学」や「社会」の問題が出題!?
①うろ覚えや丸暗記が通用しない「完答問題」と「長文問題」!
「完答問題」で、かつ思考力を問われる問題が増えた!
2019年度の公立高校理科入試では、全国的に「完答で得点」になる問題が増加しました!
その問題数は、1県につき平均6問!
多い県では、総設問数の3割以上が「完答で得点」となっていました。
つまり、用語の丸暗記や、うろ覚えの知識だけでは簡単に正解できない問題が増えているのです。
また、問題の内容に関しても一問一答形式は減少し、以下のように、会話文などを用いて「原理や原則を理解しているかどうか」を尋ねられる問題が増加しました。
☆山口県の公立高校入試より
<仮説2>クエン酸と重そうの質量の比によって、最低温度が変わる。
Aさんは、<仮説2>を検証するために、[実験]の①で混ぜる材料の質量を表1のようにかえ、[実験]の①、②の操作を行う計画を立てた。
(表1略)
Bさん
「Aさんの計画では、各回で、クエン酸と重そうの質量の《 あ 》ため、クエン酸と重そうの質量の比の違いが、最低温度にどのように影響するかを調べることはできないと思います。」
T先生
「そうだね。変化させる条件を1つだけにすることが必要ですね。」(中略)
問:《 あ 》に当てはまる適切な語句を書きなさい。
《対策・勉強法》
2020年度の入試では、さらに思考力を問われる問題が増える可能性があります。
理科を勉強するときは、問題文と解答を丸暗記するのではなく、答えにたどり着くまでの仕組みや理由を理解しながら進めていくようにしましょう!
問題を解き終わったとき、自分自身に「何でその答えになったの?」と聞いてみてください。
ちゃんと答えの仕組みを理解していれば、頭の中で上手に解説することができるはずです♪
正確な知識を定着させることが、「完答問題」と「思考力を問われる問題」を対策することに直接つながっていきますよ!
長文問題や複数資料を比較する問題
公立高校入試理科は、2012年に教科書内容が改定されて以降、難易度調整が繰り返されてきました。
しかしそれも落ち着きを見せ、2019年度の入試では特に珍しい問題も出題されず、どちらかというと、頻出問題に少しひねりを加えたような問題が多く出題される形となりました。
その「ひねり」というのが、
・よく出るパターンの問題に、条件設定が増やされる
・いくつかの実験が関連づけられる
といったものです。
それにともない、問題の文章量も増えてきています。
このような、ひねりのある問題の典型例として、以下のようなものが挙げられます。
☆岩手県の公立高校入試より
物質の性質のちがいを利用して混合物にふくまれる物質を見分ける課題に取り組み、次のような実験を行いました。
[課題]白い粉末の物質を特定しよう。A~Fは、次の混合物のいずれかである。
・砂糖とデンプン
・砂糖と石灰石
・砂糖と食塩
・デンプンと石灰石
・デンプンと食塩
・石灰石と食塩
実験内容 混合物A 混合物B 混合物C 混合物D 混合物E 混合物F 熱 こげた 変化なし こげた こげた こげた こげた 水 とけた とけ残った とけ残った とけ残った とけ残った とけ残った うすい塩酸 変化なし 気体が発生した 気体が発生した 気体が発生した 変化なし 変化なし ヨウ素液 変化なし 変化なし 変化なし 青紫色に変化した 青紫色に変化した 青紫色に変化した (中略)
混合物E、Fどちらにもふくまれている物質は特定できたが、残りの物質は特定できなかったため、【さらに実験を行い】特定した。
問題
混合物E、Fどちらにもふくまれている物質は何ですか。ことばでかきなさい。また、残りの物質を特定するため、【】ではどのような実験を行いましたか。実験の結果と、結果から特定したそれぞれの物質を明らかにして、簡単に説明しなさい。答え
物質名:デンプン
(例)混合物E、Fに水を加えてよく混ぜ、それぞれの液に電圧をかける。電流が流れれば食塩が含まれ、流れなければ砂糖が含まれている。
化学分野で物質の判別をする問題は頻出ですが、こちらの問題では実験に使用する粉末が2種類の物質の混合物となっています。
さらに、混合物が6種類あるため、表を見ながら1つずつ物質を考えていく必要があります。
また、この問題の場合は、混合物EとFが何の物質であるか特定するための実験条件も考えなければなりません。
このような、実験の条件設定を考える記述問題も、最近の入試で増えつつある注目の傾向です!
難易度は高くないけれど、知識を使いこなして考えなければならないという問題は、今後の入試でますます増えていくと考えられます。
《対策・勉強法》
長文問題の他に、複数の資料の比較・検討が必要な問題も増えています。
これらの、問題文の条件を整理して解かなければならない問題は、大量の文章を「早く」「正確に」処理することが大切です。
その練習として、なるべく早い段階から実際の入試問題を使って単元に応じた対策を進めていくことが必要です!
基礎知識が定着したと感じたら、過去問題を勉強に取り入れてみましょう♪
②「自然災害」や「環境保全」に関する問題が増加!
2019年度の入試では、「地学」の難易度がアップしました!
たとえば、地層に関する問題でよく出題されるキーワードといえば「示相化石」と「示準化石」の2つですが、2019年度入試では、過去5年間で1度も扱いがなかった「かぎ層」というキーワードが5道県で出題。
他にも、自薦災害や気象災害が多く発生していることから「火山」「地震」「日本の気象」に関する問題も多く出題されました。
このように、2019年度の理科高校入試では、今まで頻出でなかった単語が多く出題されたんです。
自然災害に関するもののほかに、「環境問題」に関する問題も出題されていました。
生態系や、植物の光合成・呼吸、燃料電池の仕組みなどは、他の教科でも問われることが多い単元なので、教科を問わず身につけておきたい知識だといえます。
2020年度以降の入試では、今以上に環境に関する問題が出題されると考えられるので、重点的に対策しておきましょう!
③理科の入試なのに「数学」や「社会」の問題が出題!?
2019年度の高校入試では、教科間の壁を越えた問題が出題されています。
☆石川県の高校入試問題より
[調査]
ある日の午後5時に、A池の水面付近を観察すると、オオカナダモが多く見られ、フナやメダカも見られた。
フナの生息数を推定するため、標本調査を行った。
まず、A池の数ヶ所で、網を用いてフナを100匹捕獲し、目印をつけて放した。
そして、フナを放してから1週間後の午後5時に、再びA池で同じ方法でフナを50匹捕獲したところ、目印をつけたフナが2匹含まれていた。
また、今年の調査では1週間にわたって毎日、早朝と夕方に池の水面付近の水温とpHの値の測定を初めて行った。問
次の文は、調査の後に科学部で行った話し合いの一部である。吉田「今年の調査から推定されるA池の個体数は( )匹だったので、先輩たちが昨年調査した結果と比べると減少しているね。なぜだろうね。」
文中の( )にあてはまる値を求めなさい。ただし、調査を行った1週間でフナの個体数の増減がなく、また、目印をつけた個体は、目印がなくならず、池の中に一様に分散したものとする。
答え:2500
こちらは、数学で出題されてもおかしくない内容の問題となっています。
数学で言うと教科書レベルの問題なので、難問ではないのですが、理科の入試問題として出題されたことで戸惑った受験生も多かったはずです。
この他にも、社会の記述問題として定番の「冬に日本海側で雪が多く降る理由」が、愛媛県の理科に出題されるなど、教科の壁はどんどん低くなっています。
勉強を「バラバラの5科目が集まったもの」と考えるのではなく、「すべてに繫がりがある1つのもの」として捉える柔軟さが、今後の高校入試では必要になってくるのかもしれませんね・・・!
全国的な理科の入試傾向を見て対策しよう!
いかがでしたでしょうか?
理科の公立高校入試は、受験する都道府県によって出題問題の単元に傾向があります。
例えば、大阪府であれば、2015~2019年の問題出現回数は以下のようになっています。
※○で囲まれた数字は、直近の2019年度に出題があったことを表します。
単元 | 出題回数(回) | |
---|---|---|
物理 | 光と音 | 1 |
水圧・浮力 | 1 | |
電流・磁界 | ③ | |
力のつり合い・仕事とエネルギー | ② | |
化学 | 密度 | 0 |
質量パーセント濃度 | 2 | |
酸化と還元 | ① | |
水溶液とイオン | 3 | |
生物 | 植物の光合成・呼吸・蒸散 | 0 |
生命を維持するはたらき | ② | |
遺伝の規則性と遺伝子 | 2 | |
地学 | 地震 | 1 |
日周運動・星座の年周運動 | 1 | |
太陽系と惑星 | ② |
基本的には、この傾向を見て、出題されやすい問題を重点的に勉強していきましょう!
ただし、上にも述べたように「地学」などは近年問題が難しくなり、入試頻出ではなかった用語も出題されるようになってきています。
そのため、自分の受験する都道府県以外の過去問題を解いて、全国的な傾向をつかんでおくことも効果的ですよ♪